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「トップクラスの中学校」

 小学校に続いて、中学校へ行く。中国の中学校は、日本の中学校と高校に相当し、それぞれ3年制の「初級中学(略称・初中)」と「高等中学(同・高中)」に分かれている。

 学校に向かうタクシーの中で、付き添ってくれた北京周報の陳さんが言う。「これから行く中学校は、北京でもトップクラスなんですよ」。小学校もすごかったけど、中学校はさらに、ということか。胸が高鳴った。


近代的なコンピュータ室

 中国人民大学付属中学校に到着した。日本語教師の楊傑川(ヤン・ジエチュアン)さんが、校内を案内してくれる。

 「敷地面積は3000平方メートル、生徒は4000人以上、教師は300人です」

 テニスコートはきれいに整備され、体育の時間なのか、白いジャージーを着た生徒たちがプレーを楽しんでいる。校舎も校庭も新しいし、とても明るい雰囲気だ。

 同校の進学率は100%。そのうち85%が、北京の二大有名校である北京、清華両大学をはじめとする、国内の主要な大学(重点大学)に入学するという。

 「ここの中学校はレベルが高いそうですが、北京の入試ってどうなってるんですか?」

 私の質問に、楊さんが答える。

 「“北京市中考”という統一試験を受けて、得点によって行く学校が決まります。うちの学校は、最も高いクラスに属し、ここ数年の成績はトップです」

 新しい校舎に入る。学生の顔写真が、壁に何枚も張られている。写真の下にある紙には、名前や卒業年度のほか、国際数学オリンピックの学生大会やコンピュータプログラミングの国際コンテストなどの入賞歴といった功績が記されている。

 楊さんが言う。「ここの学校は、数学の教育に特に力を入れています。IQ(知能指数)の高い子だけを選び、天才を養成するための教育も行っています」

 校舎内には、情報科学やコンピュータグラフィック、バーチャルサイエンスのためのコンピュータ室をはじめとする、近代的な設備が整う。

 帰国後、知ったことだが、この学校のある北京市中関村は「中国のシリコンバレー」とも称され、大学や研究機関、企業が密集する地帯だという。99年には国務院が、科学と教育により国の振興を目指す「科教興国」の拠点にすると決定した。

 有人宇宙飛行の成功など近年、目覚ましい進歩を遂げる中国の科学技術の根底にある、徹底した教育体制をかいま見た気がした。



休み時間に校内を歩く生徒たち

 高校生の英語の授業をのぞく。教師はいるのに自習で、生徒たちはヘッドホンを付け、一人ひとりコンピュータに向かっている。とても静かだ。

 何の勉強をしているのか聞くと、発音の学習だという。米国製のソフトを使い、正しい発音を習得するらしい。

 授業中の撮影は、「生徒の学習の妨げになるから」と禁止されていたが、楊さんに頼んでもらい、1枚撮れた。

 生徒たちは英語以外に、外国語の選択科目もある。「日本語が最も人気です。東京の高校との交換制度があり、日本へ研修に行けるチャンスもあるので」。楊さんが言った。

 楊さんは、研修の引率として何度か日本に行ったことがあり、また「彼女は日本人留学生です」とのことで、日本や日本人のことに精通している様子だった。

 「日本の学校は、不登校やいじめがあるみたいですが、中国はあまりありませんね。その問題を中国の学生に言うと、みんな驚きます」

 小学校で見たあの思想の教育で、強い同胞意識を身に付けていることが関係しているのだろうか。

 「でも問題もあります」。楊さんが続ける。「いまの若者は、ほとんどが一人っ子のため、自己中心的なことが多いんです」

 中国は70年代後半から、人口抑制政策を定め、子供の出産は1人しか認められないようになった。現在は、高齢化や都市部と農村部における人口の伸びの格差などを受け、緩和策をとる地方政府もあるが、少数民族などの特例を除いては、基本的に子供は1人、2人目を生んだ場合は罰金が科せられる。

 「生徒同士がうまくコミュニケーションを図れるようにするのも教師の役割だと思っています。とにかく、うちの学校が目指すのは、世界の名校になることです」。楊さんが力強く言った。



英語の発音を学ぶ生徒たち。とても真剣な様子

 帰国の途に着く。機内の窓から下を見た。広大な土地と豊富な資源を持つ大国が広がる。北京周報の夏祖芬さんの言葉を、ふと思い出した。

 「いまの中国は、硬件(ハード)は発達したけれど、軟件(ソフト)はまだまだといわれています」

 中国は今後、どう変わっていくのだろう。今後もし、訪れることがあれば、私はまたその発展ぶりに驚くに違いない。でも、「発展だけが大切ではないのでは」と伝えたくなるのは、私が現在は低迷するものの、経済成長を遂げた日本に住んでいるからだろうか?(おわり)


中学校の食堂。お昼時は生徒や先生で込み合う

 参考文献
 「中国 事実と数字2003」(新星出版社)
 「海南島をゆく」彭飛(PHP研究所)
 「三亜概況」(三亜市人民政府)

(写真はいずれも北京の中国人民大学付属中学校で)
記者 竹内智子



製作・著作:南信州新聞社