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おにぎりの横には金平糖がついていた。おにぎりのおかげで粟島にまた縁ができて戻った。ちゃんと別れることができなかった施設の皆さんと、二時間ばかり楽しい時間を過ごさせてもらった。桜貝を見つけられなかったと嘆く私におにぎりを作ってくれた奥さんが、ビンいっぱいの桜貝をわざわざ家から持ってきてくれた。桜貝を初めて見た嬉しさと、その気持ちの温かさに、また踊り出しそうだった。
別れ際みんな、少しそっけなかった。でもそれくらいでよかった。寂しいのは勘弁だった。フェリーの時間までの十五分くらいの間、島の細い道を生活の匂いをかぎながらぎりぎりまで歩いて過ごした。百日紅が鮮やかに咲いていた。そしてフェリーに乗り込もうとしたとき、あの名物主人がケーワゴンを百メートルくらい先の車止めまで乗りつけて、短いクラクションを一回鳴らして、手を振っていた。サングラスで表情はわからなかったけれど、車をUターンさせて引き返しながらこちらが見えなくなるまで大きく腕を振ってくれた。私はサングラスを外して腕と頭を交互に動かせるだけ動かした。
フェリーは私の他にも旅人を乗せて出航しようとしていた。私以外の戻る場所へ帰って行く人を、他の宿の主人が丁寧に見送りに来ていた。船はゆっくり岸を離れた。その主人は割烹着に着物の奥さんらしい人と一緒に、ずっと両手を振っていた。小さな島への船は小さくてスピードが出ない。だからその二人は、船が見えなくなるまでずっとずっと両手を振り続けていた。きっとこれほど、長く手を振る別れはないだろう。今さっきの私自身の別れとその姿が一緒になって、私はぐしゃぐしゃに泣いていた。ただ、写真を撮ることはなかった。撮ることができないほど、頭に焼き付けたい場面だった。
そうやって人の暮らしから大切なものをまた貰って、旅を終えた。
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