さらなる白に立ち向かう
昨春、県飯田創造館を会場に石原獨往さん(46歳・飯田市上郷黒田)の、少し大掛かりな3回目の個展が開催された。その会場で現職の高校書道教諭が個展を開くなど、これまでに例がなかったことである。色あせた権威主義の牙城のような場所に、書表現という新しい風を吹き込むような業(わざ)からして、まさに「獨往」であった。
そしていま、個展への出品作45点に新作8点を加えた渾身の表現53点を1冊の本にまとめるという、これもまた「獨往」的な行為である。
個展は「過去を受け入れ、現在を確かめ、未来につなげるために自分がどうすべきかを、自己の内面に問う機会」とする石原さんにとって、作品集の刊行はどんな意味を持つのか。
『石原獨往作品集―影が光を照らし始める瞬間(とき)―』。ここに収められている自作詩「光」に付された制作メモに、この作品集の本質をあらわにするようなこんな言葉が添えられている。
「私にとって白は光。つまり、希望。白は書くことにより生まれたり作られたりするもので、何も書かなければ白は光や希望になることはない」
石原さんはその白に向かい、明日への自分を書こうとする。作品制作を通して常に脱皮する自分。もとより書く行為を続けなければ、光には近づけない。
日々、表現は消え、次から次へとあらたまる白―。石原さんにとって、20年という歳月のスパンで考えるなら、いまここで自らの生きざまを確認し、その表現をかたちとして留めることは必要だろう。さらなる白に立ち向かうためにも。
妙に尊大にならず、品良く、コンパクトにまとまった一冊。「自分と作品…どちらもどうしようもありません」と自嘲(じちょう)するが、これは自重(じちょう)する石原さんをありのままに体現した作品集である。
A4判変形、74ページ。平安堂または南信州新聞社で扱っている。定価2000円(税込み)。(M)
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