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忍と力 破戒のモデル 大江磯吉の生涯 最新刊

 A5判 170ページ 定価2000円(税込み)

平田正宏 編 南信州新聞社出版局刊行


地元の教師ならでは 20年がかりの労作

 飯田市大瀬木の平田正宏さん(80歳)がこの程、島崎藤村の『破戒』の主人公瀬川丑松のモデルとされる下殿岡出身の大江礒吉の生涯を克明に辿った『忍と力 大江礒吉の生涯』を刊行した。
 藤村の『破戒』は、被差別部落出身の小学校教師瀬川丑松がその出生に苦しみ、ついに告白するまでを描いた日本自然主義文学の先陣を切った作品。兵庫県柏原(かいばら)中学校長だった大江が急逝して4年後の1906年に発表された。
 モデル論については、1919年『破戒』に感動した上郷出身のジャーナリスト小林孤燈(本名実三郎・当時23歳)が郡内の取材をもとに「小説『破戒』其のまゝ」の表題で23回にわたって連載し、青年期の大江の生涯を記録している。当時は同級生も50歳代で現存しており、貴重な証言となった。また後半生については鳥取時代の同僚だった都田忠次郎が追悼文が知られ、大江の学徳について述べている。
 本書の著者の平田さんは1987年緑ヶ丘中学校長を最後に退職したが、40年間の教職を通じて差別やいじめ問題を通して『破戒』に言及することも多かった。調べてみると、祖父が長野県尋常師範学校での大江の教え子だったり、縁戚に同級生がいたりと、大江に親しみを感じ、退職を機に本格的に大江の生涯を調べだした。大江の帰郷の足取りを追ったり、地元関係者に宛てた大江の書簡を翻刻したり、その教育方法などを克明に洗い出すなど、地元の研究者にしかできない地道な研究に20年の時間と労力を費やした。「もっと地域の人に、大江のことを知って欲しい気持ちが本書をまとめるきっかけになった」と平田さん。
 本書はA5判170ページ、定価2000円。本書のお求め・お問い合わせは南信州新聞社か書店まで。(嶋)