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飯田市歴史研究所年報1新刊
著編者・飯田市歴史研究所
B5判196頁、本体価格1300円

 飯田市歴史研究所の紀要『年報』1号がこのほど増刷になる。

 飯田市は1996年から取り組んできた飯田市誌編さん事業を見直すかたちで昨年12月2日に同研究所を設立。市誌の刊行にとらわれず、飯田下伊那の歴史資料を収集・記録・保存・公開する恒久的な文化事業として同研究所を位置づけ、市民を対象にした学術講座の飯田アカデミアや飯田関係の歴史資料を読む飯田歴史研究ゼミナールなどの活動を展開している。

『年報』は、研究所発足以前から地域史研究事業準備室の活動として行われていた研究や調査をまとめたもので、昨年7月のシンポジウム「地域の歴史をひらく」の発表の中から田中雅孝(県立松川高校教諭)「両大戦期間の組合製糸」、森武麿(一橋大学教授)「地域史をひらく」、また研究論文として、吉田ゆり子(東京外国語大学教授)「万歳と春田打ち」、齊藤俊江(飯田市歴史研究所)「下伊那地域における満洲移民の送出過程」、一橋大学森武麿セミ「戦後天龍社の発展」、さらに歴史的建造物調査として東京大学大学院伊藤毅研究室による喜久水酒造や久保田楼などの調査報告が収載された他、元飯田市長の松澤太郎さんからの聞き書きによるオーラルヒストリーも収められている。

 なかでも「万歳と春田打ち」は吉田教授が20年間暖めてきたテーマで「近世下伊那の身分的周縁」という副題が示すように、今まであまり言及されることのなかった下伊那地域の遊芸者についての考察で、読み応えがあった。また地域史研究事業参与の増田郁夫さんの編集になる松澤太郎さんの聞き書きによる自叙伝は、4日間にわたるもので、市長就任秘話などの市政に関する実話が記録されている。この他、年報への投稿規定や、研究所の活動や目的また地域の歴史資料の掘り起こしの方法や課題を知る意味でも、郷土史に関心のある人には必携の一冊。

 『年報』はB5判196頁、本体価格1300円で、装幀はブックデザイナーの第一人者菊地信義さんによるもの。同研究所開設にあわせて600部刊行されたが、たちまち品切れとなったので、積極的なPRはしなかったが、読者の求めが強く、今回300部増刷することになった。